今や「道路の歩行者化」は世界の常識。
左から  フォートコリンズ(アメリカ)、アビニョン(フランス)、ウィンチェスター(イギリス)



 6.中心市街地への積極的投資を!


―――  LRTを導入すると中心市街地のみが優遇されて、郊外で自動車に頼って暮らしている人が反発するだろう、
      だから進められないとの意見もあります。


中川    そのような論理は、ただ足を引っ張っているだけ、何ら建設的ではないと思います。
       富山市長がよく言っておられますが、富山市の場合、全市において85%以上の人が富山ライトレールに
       賛成しているそうです。郊外部の人が反対しているわけではありません。
       もちろん、LRTだけが政策であるということになれば、そのような反対の声も出てくるかもしれませんが、
       富山の場合はライトレール整備をきっかけとして、いろいろな施策を市全体に展開していますから、納得
       してもらえるんです。

       それともう1つ、市長が最近よく言っておられるのはこうです。
       つまり、市の税収においては固定資産税が重要な財源となっていて、その多くは中心市街地から上がってくる。
       ということは、中心市街地が廃れれば、市全体の税収が激減してしまう。それは得策ではないと。
       郊外の人も含めて、中心部からの税収で支えられている部分が大きいのだから、中心部に投資をすることは
       全体がプラスになるということです。

       さらに、中心部が便利になれば、郊外部の市民も、将来、車が運転できなくなった時に、中心部に移住しやすく
       なります。
      「中心市街地に来てもらえれば、病院もあるし、楽しい商店街もあって、買い物も便利ですよ。」
       そういえる環境をつくれば、市民全体が得をしますよね。
       富山市では、郊外から中心部に移り住む人には補助金を支給する制度もあります。




―――  コンパクトシティ推進などの都市政策の大枠の中にLRTを位置づければいいということですね。


中川    そうです。市内一円で同じ政策をやったほうが得かといえば、そんなことは全くないです。
       むしろ、同じような道路を市内一円に造ってきたことが財政的にも重い負担になってきたわけです。
       そう考えれば、効率的に投資できる所に効率的なシステムをつくっていく、このほうが全体としてプラスです。
       また、中心部の交通がLRTによって効率的になれば、その分、郊外のバス交通を便利にすることもできます。




―――  逆に金沢では、県庁や大学が郊外に移ってしまいましたが。


中川    街の賑わいの点からみれば、それは良くないとは思いますが、でも、郊外に移った以上は郊外と都心を結ぶ
       公共交通軸を充実させることも必要です。
       いずれにせよ、郊外に大きな駐車場をもった大きな建物を建てようという発想からは、もう転換しないといけない
       時代だと思いますね。







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5.まちづくり・観光・公共交通は一体
4.今こそバスからLRTへ

3.金沢はヨーロッパの街をモデルに!
2.「世界の潮流」は鉄軌道にあり
1.「富山ライトレール」は特別ではない