ライジングボラード(車止め)
「歩けるまちづくり」のため、こんな構造物が設置されています。
(左)アビニョン  (右)ロサンゼルス サンタモニカ


 4.今こそバスからLRTへ


―――  金沢市中心部のメインストリート、国道157号上にLRTが走れば、市民が享受できるメリットは大きいですね。


中川    歩行者と公共交通のための空間にしたほうが効果的であることは間違いないです。
       すでにバスがかなりの人を運んでおられるのでしょうけれども、たくさんの人が動いておられるなら、
       やはりライトレールにしたほうがより効率的でもあるし、多くの人にとってメリットがあります。

       例えば、バス1台にはたかだか50人くらいしか乗れません。1人の運転手で50人を運ぶのと、LRTを導入して
       1人の運転手で200人を運ぶのを比べれば、LRTのほうが格段に採算性が高いことがわかります。

       なのに、なぜ非効率な手段にいつまでも頼っているのか。
       バスで多くの人を運んでいる路線ではLRTを入れたほうが建設費を含めて考えても効率的なのに、
       どうしてそうしないのだろうかと思います。
       そのような状況であるのに財源が問題であると言う人もいます。全く意味不明です。
       財政が厳しいというのであれば、もっと効率的なシステムを導入するべきです。

       金沢の場合、金沢駅から香林坊・片町の区間は相当な人数が動いていますね。
       バスよりもLRTのほうが効率的となる量に十分達していると思います。観光客も、もしそこに路面電車があれば、
       間違いなく乗るでしょう。よその街に行って、すぐにバスに乗るのはハードルが高いですよね。
       その意味でも、ライトレールの効果はバスよりも格段に大きいのです。




―――  先生の金沢の印象からはどうですか。


中川    ライトレールは、金沢に一番合っている乗り物だと私は思います。
       歴史的なまちにはライトレールはとてもよく合いますし、道路が狭い都市ほどライトレールは有効です。




―――  もともとコンパクトな造りの街なので、香林坊の電停で降りればすぐに兼六園に観光に行けるし、
      片町に行って飲食もできる。来街者にも大変親切な乗り物ですね。


中川    その通りです。中心市街地の競争力は明らかに大きく高まります。
       とにかく自動車に頼っていたのでは他都市と勝負できないです。




―――  金沢には相当に厚い文化の蓄積もあり、富山以上にLRT導入の効果は高いと思われますが、いかがですか。


中川    そう思います。金沢は非常に大きなポテンシャルがありますのでね。
       私は、富山の成功をみれば金沢は必ずやるだろうなと、もともとは思っていました。
       富山がやれば金沢は黙っていないだろうし、金沢がやれば京都が黙っていないだろうと(笑)。
       こうしてどんどん進むと思っていたのですが、そうはいかなかった。




―――  その構想を金沢が止めている状態なのかも(笑)。


中川    そうかもしれない。
       京都からみれば富山はライバルという感覚はないかもしれないけれども、金沢が踏み込めば、
      「金沢には負けるわけにはいかないだろう」という、そんな気持ちは出てくると思いますね。
       どうなんですか。例えば財源にしても採算性にしても、きちんと計算をされて、しっかりと調査をされたのでしょうか。




―――  本格的な調査は平成10年の段階で一旦終わっているようです。
      それ以降、「財源と道幅の確保という課題が解決しないと難しい」と言われ続けていました。


中川    道幅は問題はないのではないですか。技術的にはいろいろな方法があります。
       狭い道路を走っているLRTは世界にいくらでもあります。
       また、そもそも自動車よりLRTのほうが輸送力が大きいのですから、道幅が狭いのであればより効率的に
       多くの人が移動できる交通手段を選ばなければいけません。

       財源についても、裏技というわけでもないですが、いろいろな国の補助金を使えば、そんなに負担は大きく
       ならないです。
       富山市はあれやこれやと工夫して、様々な補助金を集めてきています。
       実質、市の負担はほとんどゼロだと言っていますね。
       国としても、目立つところには金を付けたいわけです。




――― 「北陸は車社会だから、その現実に合わせよ」と言う人が少なからずいます。
      政治も行政も、車依存社会を変わらぬ前提にしているようです。


中川    車だけでは将来の街はもたないということをわかってもらわなければいけません。
       「車が運転できなくなったらどうしよう」と考えている人は、確実に増えています。
       世の中の考え方が変わってきていることを、知らないといけないと思います。

       どうも日本人には、先入観を一度もってしまうと、考え方がずっと変わらないという傾向がありますね。
       例えば、「整備新幹線は大赤字」という、40年前に形成された先入観を未だにもち続けている人が
       たくさんいますからね。世の中の変化に合わせて、考え方も変えていかないといけません。
       自動車が便利な街であればそれで十分、というのは、もう明らかに世界の常識ではなくなっています。




―――  金沢市は「歩けるまちづくり」を推進していますが、すぐ横を頻繁に通る車に気を使って都心の繁華街を
      歩いていても、楽しめないどころか危険です。


中川    「歩けるまちづくり」という考え方は大変すばらしいです。
       バスに力を入れておられるのもすごくいいと思いますが、バスがどんどん活用されるようになれば、
       当然、ライトレールのシステムに移行したほうがいい路線があるとわかってくると思います。
       現時点で、もうその段階にきていると考えていいのではないかと思います。

       私はバス路線の新設や再生にたくさん関わってきましたので、どちらかというとバス派ではあります。
       けれども、バス派からみれば、ライトレールがとても羨ましいんです。
       ライトレールのほうが優れた面がたくさんあるからです。





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3.金沢はヨーロッパの街をモデルに!
2.「世界の潮流」は鉄軌道にあり
1.「富山ライトレール」は特別ではない

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