富山ライトレール。市民の足として、すっかり定着しています。 


 1.「富山ライトレール」は特別ではない


――― 中川先生は、JR富山港線をLRT化した「富山ライトレール」に計画段階から関わってこられたそうですね。  


中川  私が富山県の出身であることもあって、当時の富山市の助役の望月明彦氏と、直接の担当者で、
     その後、路面電車化推進室長を務められた谷口博司氏が、ある日、私の研究室にやって来られました。
     ライトレールを造りたいというお話でした。

     その説明を聞いて、とても優れた発想で、面白そうだし、可能性は十分にあると思えたので、
     「やったらいいと思うよ」と話しました。
     さらに、「何年くらいで造るつもりなの」と聞いたところ、3年という答えでした。
     ちょっとびっくりしましたし、向こうも「無理かな?」と言っていましたが、「いや、今の日本の常識的な発想からは、
     無理だという人が多いかもしれないけれど、物理的には無理じゃない。十分可能です」と答えました。  

     そしたら、その1カ月後か2カ月後に森雅志富山市長が3年で造ると表明されました。
     そこから始まったんですね。
     路面電車化検討委員会が立ち上がって、私も入って一緒に計画を練っていった。
     当時のJR富山港線を、バスに転換するケース、廃止するケースなど、いくつかの案をつくって検討した結果、
     ライトレールとして活用することが一番いいという結論になったんです。

      もともと富山市の考え方はしっかりしていました。
     既存の富山港線の線路を活用してライトレール化する方法は上手だと思いましたし、財源についても、
     連続立体交差化の財源、つまり道路財源をうまく使うというアイデアでした。
     望月氏は国土交通省の都市局の出身でしたから、そのためのノウハウをもっていたんです。




――― その点で、富山は特殊なケースで、たまたまうまくいったという見方もあります。
     これから本格的にLRTを導入しようとする全国の都市には当てはまらないと。


中川  それは全く違いますね。
     望月氏はもともと、「この方法は全国の多くの都市で応用できるはずだ。まずは富山から」と考えていたんです。
     それに現在は、国の社会資本整備財源はライトレールのためにかなり使いやすくなってきていますので、
     財源上、問題があるとはいえないようになっています。
     そもそもライトレールは他の公共事業と比べてそれほど事業費が大きい事業ではないですからね。
     例えば、電線の地中化のような事業に比べれば、費用的にはものすごく安いです。
     ライトレールより事業費の大きな事業はどの都市でもいくらでも行っているのに、なぜ実施する都市がないのか
     不思議です。




――― 既存の路線を活かした富山とは違い、新たに造るとなると難しいという意見もあります。


中川  それはそうかもしれません。富山で新しく軌道を造ったのは1キロ程度の部分ですから。
     でも、金沢もそうですが、既存の鉄道線路を延伸するという方法は有効です。
     延伸でなくても、いろいろな工夫が考えられます。







Next→ 2.「世界の潮流」は鉄軌道にあり