リレーコラム*3

町を空から見ると何が分かる?
 今度充之

金沢駅付近の街並みを航空写真で見ると、斑模様です。大小さまざまな駐車場があちこちに見られます。
民家や建物の形、色が様々です。街の中を歩いていているとコインパーキングの多さに驚いてしまいます。
金沢は戦災を受けなかった町。せっかく空襲を免れて破壊されずに残った城下町を市民自らの手で壊して
いるのはとても残念なことです。


ミュンヘン(ドイツ)とチューリッヒ(スイス)の航空写真も見てください。駅の近くの市街地ですが、きれいな
幾何学模様のようです。ミュンヘンは第二次世界大戦で焦土と化しましたが、大聖堂も家並みも昔のまま
綺麗に復元されました。
ヨーロッパ旅行で誰もが最初に驚くのは、建物の形、様式、色彩が統一された街路景観の素晴らしさでしょう。
金沢でも、ひがし茶屋街、にし茶屋街、主計町といった伝統的建築物が連なる街並みはとても素晴らしい。
ほかにも、彦三町、橋場町、寺町などなど、昔ながらの街並みの景観を味わえるところがたくさん残っています。
そのような場所で町屋が取り壊されている場面に遭遇することがあります。コインパーキングになると思うと、
とても悲しい気分になります。

金沢市は、過度のマイカー依存の生活から脱却した人とまちと環境が共生できる“歩けるまちづくり”を
推進していく、としています。
“歩ける”ためには細街路への自動車の流入を抑えて安全な町にすることが最優先。
それには思い切って自動車の流入と駐車場を規制し、その代わりの住民の足として、緻密で利便性の高い
公共交通ネットワークを準備することが不可欠です。これらの取り組みが着実に進むならば中心市街地に
人が戻り、城下町金沢にふさわしい賑わいと美しい街並みが戻ってくると思います。
金沢が“歩ける”ではなく“歩きたい”町となることを期待しています。

町を空から見ると何が見える?
それは、町に対する住む人たちの思いの強さだと思います。





  
金沢市街地                      町屋が…?


  
ミュンヘン市街地                         チューリッヒ市街地


2015.12.22 掲載